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執筆録


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地域は金(きん)の山

竹田理論を信じ「商品、地域、客層の限定」を行う事を決めた。
その中で一番に地域を限定した。地図を開き、コンパスで
地域を決めようと、毎日円を引いてみた。「対象とする地域の
広さはどれぐらいがいいのか?」と円を書き、その中にどんな
ものがあるのかを考えた。

そして、とにかく歩いてまわった。道路や川で商圏が変わるのか
どうか。学校区の区切りや歴史的背景、神社仏閣の地域区分の
違いなどの現状分析をした。また、福岡市は城下町と商人町の
違いなどあるのだ。

今までは、自己満足だけのために仕事をしていた…。
新築マンションの販売を請けた時のような、舞い上がる気持ちは
封印して、経営とはどういうことであるかを意識し、地域把握の
ために歩いてまわった。

最初は何がなんだかわからずまわっていたが、2・3回と続ける
うちに、少しずつ商圏の違いが見えてきた。不動産業は1件の
取り引き額が大きいため、クレームが多い。お客様に迷惑を
かけない範囲(自転車で10分圏内で駆けつけられる)を
イメージし、半径500mと決めた。直径1km。テリトリーが
直径1kmということだ。


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「この営業範囲の限定をどう思うか。」友人10人に相談したが
「お前は馬鹿だ。不動産屋が半径500mでやれるわけがない。」と
いわれた。しかし、20万円のテープは「地域は狭くしろ。」
「1番になれる地域に限定しろ。」 「移動時間は無駄だ。」と
いうのだ。テープが何度も無駄だというから、しょうがない。
私がやれると決断できる範囲は「半径500m」と決めた。

コンパスで地図に線を引いてみた。会社の場所を支点にして円を
描いてみた。中心は事務所がある上川端(かみかわばた)町(まち)。
円の中に入ったのは祇園(ぎおん)町(まち)、冷泉(れいせん)町
(まち)、上川端(かみかわばた)町(まち)、店屋(てんや)町(まち)、
中洲(なかす)1~5丁目だった。9つの町が入っていた。そこは古い
町で、博多弁丸出し、「山笠(やまかさ)」、「どんたく」といった、
福岡市内でも伝統ある祭りを愛している人達の町。旧博多部
(きゅうはかたぶ)だ。何代も前からこの地に住み、昔から「ここは
福岡やないったい、博多ったい!」というような地元意識の高い
人の町。

私は宮崎県延岡市(のべおかし)出身。当時は全く博多弁も話せ
なかった。サラリーマン時代は、熊本、鹿児島、北九州と転々と
していたので、自分が話している言葉が何弁かもわからない。
地域の人と話すと、イントネーションがおかしいらしく
「あんた、どこ出身ね?」とよく聞かれた。

地域を限定した地域戦略を始めたときは、全くの「四面楚歌」だった。
博多には友人、知人は全くおらず、何もわからない状態でのスタート。
飛び込み営業をし「こんにちは、福一不動産です!」と言うと
「お前だれな、聞いたことなかね。帰りやい。」といわれた。
博多弁「聞いたことなかね=知らない」「帰りやい=帰れ」という意味。

しかし、1件1件、飛び込み営業をしないと仕方がない。当時、地域の
人には認知度ゼロの私だったが、この地域に骨をうずめると決心して
いたからだ。この限定した地域をまわると、「お前だれな、聞いた
ことなかね。帰りやい。」ずっとそういわれ続けた。飛び込み営業を
しながら半径500mをまわりながら分析していった。


100325-02.jpg


ゼンリンの地図に掲載されている各ビルの入居店舗数を詳しく分析した。
中洲には店舗が2700件あるのだとわかった。川端(かわばた)地区には、
マンションと事務所が2300件ある。更に、上記以外の仕事のネタになる
売り地や売りビル、駐車場の数も数えた。上記の不動産が、1年で
どれぐらい賃貸募集され、どれぐらいの価格で売りに出されるかを考えた。
その内何%が成約するかをシュミレーションしてみた。そして、その
仲介手数料はいくらぐらいだろうかと考えてみた。賃貸物件の出入りは
年間何%あるだろう。どれぐらいの金額が手数料として入って
くるのだろうか。中洲のビルは約100棟。年間に何棟売買されるのだろうか
と考え、ソロバンをはじき、計算してみた。

「半径500mで年間の仲介手数料はどれぐらいになるのだろうか。」
日夜、計算に計算を重ねた。そして、すごい数字がはじかれた。
なんと、年間30億円の仲介手数料が見込めることがわかった。それも、
粗利益での収入なのだ。たった半径500m内に30億円眠っている!私は
思った以上の結果にびっくりした。30億円全部を売り上げるのは無理。
しかし、ランチェスター経営の統計によると「市場の26%取ったら、
NO.1」とテープがいっていた。「限定に限定を行った極めて狭い地域
なので、地道にやれば、3割も夢ではない。3割取ったら、間違いない
ナンバーワンだろう。」と私は考えた。

30億円の3割は10億円。粗利益の仲介手数料が年間10億円になる。
年商10億円の不動産会社になると、福岡市内の不動産会社の中で5本の
指に入る。当時、分析だけで何もスタートしてない私だったが「年商
10億の不動産会社になれる!」と夢がわいた。

にわかな数字だが、将来が見えた気がした。「10億円売り上げられる
会社になりたい。」と思った。それは、今でも経営計画書に書いている。
「○○年後に10億円」と入れている。私はこの地域に対して「掘れば
金(きん)が出てくる、金(きん)の山だ!」思った。四面楚歌で宮崎県
出身の私…「お前だれな?」といわれるが、地域はそのうち「金(きん)の
山」になると思いだした。「必ず金(きん)が出る!」と。これを
きっかけに、もっと深く分析をやっていった。


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地域のことをもっと知りたいと考えた。そんなある時、ランチェスター
経営の勉強をしている神奈川県の不動産会社さんがヒントをくれた。
その会社は、ファミリーレストランやディスカウントショップ等を
建てる土地を探して、長期で賃貸する仕事(建(たて)貸(がし)業)だ。

その会社は、月に1回車の両側にビデオカメラを設置し、幹線道路を
走りながら道の両側を撮影した。車を運転している時には気づかない
周辺の変化を見つけるためにやっていたのだ。例えば、建物が建っていた
ところが更地になった変化を見つけた場合は、その土地の所有者を調べる。
そして、営業に行き、建(たて)貸(がし)の依頼を取るという。

その話にヒントを得た私は、私の地域に活用できないかと考えた。
普通に歩いているとじっくりチェックできない地域分析をビデオに残す
ことで、じっくり確認できると気づいた。そして、ビデオを撮っていった。
時間がある時は、ビデオを見ることで深く地域のことがわかるようになった。
空地、駐車場、どんなマンションで、管理会社はどこ、店舗の名前など
鮮明に私の脳裏に記憶された。すると、地域に何か変化があると、記憶
されているビデオの映像との違いに気づき、即座にわかる。ちょっとした
変化も見逃さない。

例えば、あるお店の看板が変わったとする。今までは気付かなかった
「お店が変わった」という情報に即座に察知することができるように
なった。地域のどんな動きも見逃さなくなったのだ。この土地は
○○不動産、このビルは△△不動産、この駐車場は□□不動産が管理…
ということがわかってきた。そして、ビルの外壁や看板、扉などの状態で、
新しいのか古いのかなども把握していった。「この会社は、扉や看板は
メンテナンスが悪い。もしかすると近い将来廃業し空室になり、賃貸
募集物件に変わるかもしれない。」新築のビルが建っていると、「その
ビルを扱う不動産会社は決まっているのだろうか?」といったことを
考えるようになっていった。


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「地域は金(きん)の山」。
しかし、これからこの地域にどのように関わっていくのかは、まだ
決めていなかった。


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